■目次
大手法律事務所の離婚のホームページで「損はさせない保証」という記述がありましたので、検証してみました。
この法律事務所では、現在は離婚の相談は受け付けていないようですが、公式のサイトに離婚の損はさせない保証が記載されておりましたので、検証しております。
またこの記事は、2019年9月24日のホームページのデータをもとに書いております。
その後、ホームページの記載が変更されているかもしれませんので、2019年9月24日時点での検証とお考えください。
またこのページは損はさせない保証を否定するものではありません。
損はさせないという単語が独り歩きし、内容をよく理解せずにどんな条件でも損はしないんだ、と間違った思い込みをしてしまう方のために書いております。
当たり前のことですが、どんな条件でも損はしないなどということはありません。
このページをよく読んで、損はさせない保証をよく理解してください。
損はさせない保証とは
損はさせない保証とは、離婚を希望している方は離婚が成立しなかった場合、離婚請求を拒否したい方は相手方の離婚請求が、裁判でみとめられてしまった場合には、着手金、日当・実費を返金する。というものです。
つまり、離婚したいと、この法律事務所に依頼した方の場合、離婚が成立しなかっときには、それまで支払った費用が全額返ってくるというものです。
また、離婚請求されている方がこの法律事務所に離婚阻止を依頼した場合、裁判で離婚が決まったときには、それまで支払った費用が全額返ってくるということです。
ですから、依頼者の離婚したい、離婚したくないという望み通りの結果にならなかった場合には、依頼者の費用負担がないため損はさせない保証が成り立つということです。
とてもよい保証制度のように思いますが、早合点してしまう方もいるかと思いますので、損はさせない保証が適用されないケースも解説いたします。
損はさせない保証が適用されないケース
損はさせない保証は無条件ではありません。
離婚したいと依頼した方が途中で「やっぱり離婚はやめて夫婦関係を継続する」という場合には、損はさせない保証は適用されず、そこまでの事案の進行状況に応じた弁護士費用を支払うこととなります。
離婚したくないと依頼した方の場合は「離婚してもいい」となった場合には、損はさせない保証は適用されないということです。
この二つのケースの場合、弁護士に依頼した際の約束とは違い、離婚しない・離婚すると180度変わるわけですので、損はさせない保証が適用されず、依頼者に費用負担が生じるのは、当たり前のことのように思います。
ですから、依頼者は「損はさせない保証=どんな状況でも損をしない」などと早とちりせず、ご自身の方針をきちんと決めてから依頼しないと、損をしてしまうことになります。
その都度支払うことに注意
ホームページを見ると、着手金、日当・実費はその都度支払うこととなっているようです。
例えば、離婚したいと依頼した方は、最初に交渉・調停の着手金20万円と実費1万円の合計21万円を支払うこととなります。
交渉段階で離婚が成立しなかった場合は、損はしませんので、この支払った費用は返金されます。
次の調停段階に進んだ場合は、調停1回ごとに5万円と交通費などの実費を支払うこととなります。
離婚調停は6割程度が3回ぐらいで終わりますので、5万円×3回=15万円プラス交通費などの実費を用意しておく必要があります。
しかし調停でも離婚が成立しなかった場合は、支払った費用は返金されますので、損はしません。
調停でも離婚が成立せず、離婚裁判になった場合は、まず追加着手金として15万円を支払うこととなります。
そして、裁判1回ごとに3万円プラス交通費などの実費をその都度支払うこととなります。
離婚裁判は1年くらいはかかりますので、3万円×12回=36万円プラス実費を支払うこととなりますが、離婚が成立しなかった場合には、支払った費用は返金されますので、損はしません。
最終的に離婚が成立しなかった場合には、全額返金されますので損はしませんが、その都度支払う費用がありますので、その点は事前に注意しておく必要があります。
具体的な大まかな金額を以下で解説します。
調停なら36万円、裁判ならプラス51万円程度の準備を
離婚調停3回程度で決着なら36万円プラス実費程度は事前に支払う必要があります。
離婚裁判12回までならば、さらに追加で着手金15万円と裁判の弁護士費用3万円×12回の合計51万円プラス実費程度を事前に支払うこととなりますので、その費用は準備しておく必要があります。
つまり、「損はさせない=決着するまで費用の支払はない」ということではありませんので、その点もご注意ください。
ホームページはきちんと読んでください
損はさせない保証のページを詳しく読みますと、これまで解説してきた内容になるかと思います。
この法律事務所のホームページには、損はさせない保証の内容がきちんと書かれてありますので、ホームページをきちんと確認している方は問題ないと思いますが、どんな条件でも損はしないと早とちりする方もいるかと思いましたので、このページで注意する点などを解説いたしました。
損はさせない保証はとてもよい保証のように思います。
しかし、無条件ではありませんので、きちんとホームページを読んで、納得してから依頼するようにしてください。
きちんとホームページを読むということはこの法律事務所に限ったことではありません。
弁護士費用は高額になります。
弁護士は慎重に選んでください。
裁判になると高額かも
弁護士費用の額に関して個人的な見解を述べます。
今までの計算からすると調停3回、裁判12回の離婚裁判で決着した場合、着手金と日当で87万円を支払っていることとなります。
東京の離婚の弁護士費用は全国平均と比べ高いですが、離婚裁判でも着手金50万円程度ですので、それと比べるとこの法律事務所の弁護士費用は少し高いような気がします。
調停で決着した場合は着手金と日当で36万円程度でそれほど高いというイメージはないのですが、裁判となると高額になるようです。
ただし、弁護士費用は個々の法律事務所で自由に決めてよいこととなっていますので、高いから悪いというわけではありません。
高い法律事務所にはそれなりの魅力があるかと思います。
損はさせない保証もそのひとつかも知れません。
高いのがいいとか悪いとかいうつもりはありません。
しかし、相場よりも高いか安いかを知っておくのも重要かと思いましたので、私なりに計算し、出してみました。
離婚の弁護士費用の計算は本当に難しいです。
離婚そのものを争うことはあまりない?
最後になりますが、この法律事務所では離婚の相談は現在は受け付けていないようです。
損はさせない保証に無理があったのかもしれません。
以前私は、離婚問題を扱っている弁護士から「調停や裁判までいくと離婚そのものを争うことはなく、条件面での争いが多い」と聞いたことがあります。
実際、離婚調停では4割で離婚が成立していますし、離婚裁判では9割で離婚が成立しています。
ですから調停・裁判まで進むと条件面で折り合いがつけば離婚は成立すると思われます。
そしてその印象が強かったものですから、今回の「損はさせない保証」も「離婚をしたい」という依頼であれば、依頼者を選ぶ必要はでてくるかと思いますが、離婚成立を獲得できる可能性が高く、「損はさせない保証」が成り立つのかな、と思っていました。
しかし、現在は離婚の相談を受け付けていないということは、離婚の場合は「損はさせない保証」は難しかったのかな、と思います。
弁護士費用は自由化され、様々な弁護士報酬体系の法律事務所が生まれてきています。
弁護士報酬体系をきちんと理解したうえで、弁護士を選ぶようにしてください。
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