弁護士法の改正に伴い、日本弁護士連合会及び各単位弁護士会は、平成16年4月1日より報酬規定(以下「旧規定」といいます。)を廃止しましたが、現在も旧規定を採用している法律事務所は多くあります。
そこで、離婚の弁護士費用に的を絞り、旧規定と現在の費用体系の比較をしてみました。
旧規定からわかること
離婚調停事件の旧規定の着手金、報酬金は以下の通りです。
日弁連 :20万円から50万円
東京弁護士会 :30万円以上50万円以下
第二東京弁護士会:30万円以上50万円以下
札幌弁護士会 :20万円以上40万円以下
このことから、札幌は旧規定ベースですでに東京に比べ、着手金で10万円、報酬金で10万円、合計20万円安いことがわかります。
現在でも「【2020年】離婚の弁護士費用の全国ランキング」によると、札幌は東京より約18万円ほど安くなっています。
ですから、旧規定の流れが現在も続いていると言えるかもしれません。
そこで次に、日弁連の旧規定にあった「財産分与,慰謝料等の請求は,上記とは別に,1又は2による。」という条項が、現在はどうなっているか20の法律事務所の離婚の弁護士費用を参考に調べました。
※1又は2によるとは、民事事件の訴訟事件、調停事件及び示談交渉事件の計算方法によるというのもです。
財産分与,慰謝料等の請求で旧規定を使用している事務所
財産分与,慰謝料の請求で旧規定を使用している事務所がどの程度あるかを20の法律事務所のホームページで調べました。
着手金で民事事件に準ずる費用を追加する事務所は1社のみでした。残りの19社は、財産分与,慰謝料の請求があっても着手金は追加されることはないようです。
報酬金は、旧規定に準ずるが4社ありました。それ以外は獲得額の10%が一番多く12社、その他は12%,13%,15%となっています。
結果的に着手金または報酬金で旧規定を使用している事務所は、20社のうち4社、20%ほどでした。
また、60%の事務所は、着手金追加ナシ、報酬金は獲得額の10%となっていました。
結論としまして、離婚事件の財産分与,慰謝料の請求において旧規定を採用している事務所は少ない。ということがわかりました。
調査結果の詳細は、下記表の通りです。
※旧規定というのは、民事事件に準ずる費用ということです。
着手金 | 財産分与,慰謝料の報酬金 | 比率 |
---|---|---|
着手金:追加ナシ、報酬金:獲得額の10% | 12 | 60% |
着手金:追加ナシ、報酬金:獲得額の12% | 1 | 5% |
着手金:追加ナシ、報酬金:獲得額の13% | 1 | 5% |
着手金:追加ナシ、報酬金:獲得額の15% | 2 | 10% |
着手金:追加ナシ、報酬金:旧規定 | 3 | 15% |
着手金:旧規定、報酬金:旧規定 | 1 | 5% |
各弁護士会の旧報酬規程
参考までに私の手元にある各弁護士会の旧規定を表示いたします。
離婚の弁護士費用(調停事件,交渉事件の場合の着手金,報酬金)は下記のように規定されていました。
日本弁護士連合会の旧規定
日本弁護士連合会の旧規定の離婚事件で調停事件,交渉事件の場合の着手金,報酬金は、下記のように規定されていました。
それぞれ20万円から50万円の範囲内の額
※離婚交渉から離婚調停を受任するときの着手金は,上記の額の2分の1
※財産分与,慰謝料等の請求は,上記とは別に,1又は2による。
※上記の額は,依頼者の経済的資力,事案の複雑さ及び事件処理に要する手数の繁簡等を考慮し増減額することができる。
東京弁護士会の旧規定
1.離婚事件の着手金及び報酬金は、次のとおりとする。ただし、同一弁護士が引き続き上訴事件を受任するときは、着手金を適正妥当な範囲内で減額することができる。
・離婚調停事件、離婚仲裁センター事件又は離婚交渉事件
着手金及び報酬金は三十万円以上五十万円以下
・離婚訴訟事件
着手金及び報酬金は四十万円以上六十万円以下
2.離婚交渉事件から引き続き離婚調停事件又は離婚仲裁センター事件を受任するときの着手金は、前項の規定による離婚調停事件の着手金の額の二分の一とする。
3.離婚調停事件から引き続き離婚訴訟事件を受任するときの着手金は、第一項の規定による離婚訴訟事件の着手金の額の二分の一とする。
4.前三項において、財産分与、慰謝料など財産給付を伴うときは、弁護士は、財産給付の実質的な経済的利益の額を基準として、第十七条又は第十八条の規定により算定された着手金及び報酬金の額以下の適正妥当な額を加算して請求することができる。
5.前各項の規定にかかわらず、弁護士は、依頼者と協議のうえ、離婚事件の着手金及び報酬金の額を、依頼者の経済的資力、事案の複雑さ及び事件処理に要する手数の繁簡等を考慮し、適正妥当な範囲内で増減額することができる。
第二東京弁護士会の旧規定
第二十二条 離婚事件の着手金及び報酬金は次表のとおりとする。ただし同一弁護士が引き続き上訴事件を受任するときは、着手金を適正妥当な範囲内で減額することができる。
離婚事件の内容 着手金及び報酬金
離婚調停事件又は離婚交渉事件 30万円以上50万円以下
離婚訴訟事件 40万円以上60万円以下
2 離婚交渉事件から引き続き離婚調停事件を受任するときの着手金は、前項の規定による離婚調停事件の着手金の額の2分の1とする。
3 離婚調停事件から引き続き離婚訴訟事件を受任するときの着手金は、第1項の規定による離婚訴訟事件の着手金の額の2分の1とする。
4 前3項において、財産分与、慰謝料など財産給付を伴うときは、弁護士は、財産給付の実質的な経済的利益の額を基準として、第十七条又は第十八条の規定により算定された着手金及び報酬金の額以下の適当妥当な額を加算して請求することができる。
5 前4項の規定にかかわらず、弁護士は、依頼者と協議のうえ、離婚事件の着手金及び報酬金の額を、依頼者の経済的資力、事案の複雑さ及び事件処理に要する手数の繁簡等を考慮し、適正妥当な範囲内で増減額することができる。
札幌弁護士会の旧規定
それぞれ20万円以上40万円以下
※離婚交渉から離婚調停を受任するときの着手金は,上記の額の2分の1
※財産分与,慰謝料等の請求は,上記とは別に,1又は2による。
この情報が参考になれば幸いです。
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最後までご覧いただきありがとうございました。
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