このページでは、痴漢で逮捕された場合、微物検査(微物鑑定)で容疑者の手や衣服に繊維片が付着していなければ無罪か、ということに関して解説しています。

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刑事事件に強い弁護士・川合晋太郎法律事務所

微物検査(微物鑑定)とは

微物検査(微物鑑定)とは、痴漢事件などで、犯人と思われる人物の手などに、被害者の衣服の繊維片が付着していないかを調べる科学的な検査のことです。

人が手で一定時間衣類を撫でるなどすれば、衣類の繊維片が手に付着するは明らかと裁判官も認めています。

微物検査は、痴漢冤罪を減らせると検査として期待されている検査手法です。

繊維片が検出されなければ無罪か

微物検査で被害者の衣服の繊維片が検出されなければ無罪、ということがネットで話題になったことがあります。

ある弁護士がテレビで微物検査のことを言っていたようで、それが拡大解釈されてネットに広まったようです。

その弁護士はある痴漢事件で微物検査が決め手となり無罪が確定した、というようなことを言っていたようなのですが、よく聞くと容疑者はアプリを使って帰宅しており、その帰宅経路情報と被害者女性の被害にあった場所・時間を照らし合わせれば無罪が濃厚だったようです。

つまり無罪の決定的な証拠は帰宅ルートが正確にわかるアプリの結果であり、微物検査ではないのです。

微物鑑定の結果は駄目を押しただけで、どうもそれが独り歩きしてしまい「微物検査で繊維片が検出されなければ無罪確定」と誤解されてしまったようです。

そもそも繊維片が検出されなくても有罪という判決は数多くあります。




無罪とならない理由

繊維片が検出されなくても有罪となった判決文を読むと、微物検査が重要な意味を持つことを裁判官は認めているものの、微物鑑定するまでに被疑者が手を服などで擦れば繊維片が落ちてしまうことも考えられる、として微物鑑定の結果が決め手にならないことが多いのです。

ですから先に紹介した弁護士がテレビで言っていたように、疑われたら両手を挙げて微物鑑定されるまで何も触らないという行動は、現実的にはなかなか難しいですが重要な行為だと思います。

繊維片が検出されなくても有罪となった例

繊維片が検出されなくても有罪となった判決文を読むと、容疑者の供述に矛盾があったり、何度も痴漢で捕まっていたりして、供述の信ぴょう性がないことが多くあります。

また最近は電車やバスの中にも監視カメラがありますので、容疑者の不審な行動なども参考に有罪となっているケースもあります。

結論から言うと、繊維片が検出されなかったとしても、そのことが無罪の決定的な証拠にはならないというものです。

というと、微物鑑定が導入されても痴漢冤罪は減らないじゃん、と思われた方も多くいると思いますが、最後に、現在はいかに痴漢冤罪に慎重かということがわかる判決をご紹介したいと思います。

痴漢無罪の判決文

疑わしきは罰せず」という言葉を聞いたことがあると思います。

痴漢で無罪になった判決文を読むと、裁判所が痴漢冤罪に慎重なことがわかります。

故意とは認められないとして無罪となった例

痴漢行為には故意が重要な要件となりますが、以下は故意が合理的に認められないとして無罪となった判決例です。

・被告人の手が被害者の乳房に着衣の上から接触したことは認められるものの、故意があったと認めるには合理的疑いが残るとして、無罪。

・被告人が被害者に対して何らかの痴漢行為を行った可能性はあるものの、具体的行為の内容や故意を合理的な疑いなく認定することまではできないため、無罪。

このように故意であったと合理的に疑いなく認定できないとして無罪ということがあります。

犯人であることが認められないとして無罪となった例

犯人と特定できないとして無罪となった判決例です。

・女性が痴漢の被害に遭ったことには合理的疑いがないものの、その犯人が被告人であることについては、合理的な疑いが残る、として無罪

・被告人が犯人である証明が不十分であり、犯罪の証明がない、として無罪

このケースは、痴漢被害は認められるものの確実に犯人とは言えないとして無罪というものです。

このように裁判においても無罪は意外と認められています。

また、そもそも警察、検察段階で痴漢冤罪が起こらないようにも注意されていますので、「それでもボクはやってない」の映画のイメージが強いですが、痴漢冤罪が起こらないように現在は捜査機関もかなり慎重に対応しています。

ですから、現在は痴漢に疑われても逃げるようなことはせず、正々堂々と取り調べを受けた方がよいという弁護士が増えています。

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